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パネルディスカッションレポート(2)

パネルディスカッションの様子(2)

今後、どのようなベンチャー企業または 分野に向けて投資を行いたいと考えておられますか
とっとりキャピタル(株)
岡 村
 とっとり地方創生ファンドとしては、X-Tech(クロステック)とは関わっていきたいと考えています。キャピタル会社としてはテクノロジーを持っていませんが、島根県ではしまねソフト研究開発センターが様々なプログラムを持っています。このような機関と連携をしながら、従来の事業者とテクノロジーを掛け合わせた、新たなビジネスモデルに取組む企業などには積極的な出資も検討したいと思っています。
山陰合同銀行
西 尾
 従来の産業振興施策としては、都会地の大企業の製造業を工場誘致して雇用が増えてよかったということがあったと思います。しかし、これも限界に来ている面もあるのではないでしょうか。
 そういう意味でも、当行においては大学の持つ技術に着目しています。現在取組んでいる大学ベンチャーファンドは、再生医療、抗体医薬、癌のウイルス療法、カニ殻のチキンキトサン、ナノファイバー、素材系など様々あります。従来の労働集約的事業から知識集約的事業へ、山陰は知識で勝負できる産業へと変わっていく必要あると考えています。当行といたしましては、地方に生きる銀行の役割の一つとして、大学の持つ技術の事業化に向けて大学と企業を橋渡しするような役割があると思っています。柔らかい頭をもって知識集約的事業の育成に取り組んでいきたいと考えています。
島根銀行
清 水
 当行は、SBIホールディングスとの業務提携を機に、SBIグループと連携して理系人材の派遣・紹介を積極的に取組んでおられるアスタミューゼ株式会社と提携いたしました。同社はSCOPEという独自の人材採用プラットフォームを持っています。中小企業にとって理系人材の獲得はとても難しい状況が続いており、この点を支援していきながら地方創生に貢献したいと考えています。
 また、出資についての考えとしては、知財をキーワードに探っています。現在、特許情報をもとに成長領域を分析しています。今後成長が期待される分野として、エネルギー、医療、健康、宇宙、海洋開発、自動運転などが挙げられます。島根県では6,000件の特許が出願されていますが、県内中小企業でも積極的に特許出願している企業もあります。それらの知財が、成長が期待される新しい分野でどのように活用できるのかを見つけることができれば、新たな融資・投資という形で企業支援ができるのではないかと考えています。

 

 

各社が進めているオープンイノベーションの 取り組みについてご紹介下さい
(株)デジタルガレージ
豊 原
 オープンイノベーションについては、とても積極的に取組んでいます。スタートアップ育成するには、我々単体で行うのは限界があると感じています。バイオ、ライフサイエンス領域でいうと、DGLabは、AIなどデジタル技術には強いのですが、ライフサイエンスに関する知見は持ち合わせていません。そこで、この部分を製薬会社、化学会社、素材会社、食品会社に手伝ってもらってベンチャーを一緒に育成するべくバイオテクノロジー・ヘルスケア特化型アクセラレータープログラム「OpenNetworkBiohealth」を開催しています。
 また、オープンイノベーションの中で、もっとスタートアップ企業がスケールできる方法もあるのではないかと思っています。単純に1社に対して1キャピタルが資金を供給したとして、お金があれば大きくなるということでもないと思います。事業を大きくするためにはいろんな企業が入る必要があります。この(株)ERISAのプロジェクトも事業会社が3社入っており、一気にチャンスが広がっていくのではないかと可能性を感じています。
(株)島津製作所
西 本
 当社は、1875年の創業以来、大学との共同研究をベースに技術提携やアライアンスを元に自社の将来のコア技術を獲得してきた経験があります。昨今言われているオープンイノベーションでは、これらに加え、ある事業を想定した場合の不足ピースをどうするかという観点、逆に、我々のシーズをどのような新しい技術と組み合わせれば事業化できるかなど、技術導出型の取組み、さらに将来のお客様と一緒に研究開発を行うことも重要なオープンイノベーションの形態だと考えています。
 スタートアップ企業と一緒に進める場合は、スピード感を活かしたアジャイル型のような事業開発が重要で、ここではディスカッションと検証を繰り返しながら新しい事業を探っていくことになります。
メディカル・ケア・サービス(株)
中 本
 介護事業者で出資を活発に行っている会社はそんなにはないと思います。オープンイノベーションの形で出資したケースとして、スピーカーを販売しているユニバーサル・サウンドデザイン(株)の事例があります。難聴の方などは加齢に伴って高音域が聞こえにくくなります。そこで、聞こえにくい音域をクリアにしていくスピーカーを提供したところ、難聴の方にとても効果的でした。金融機関では導入されていることが多いようです。金融機関では高齢者の方に商品紹介する機会がありますが、高齢者からは後になって“聞いていない”とトラブルになったこともあったとのことです。しかし、実は“聞いていない”ではなく、“聞こえていなかった”。これを解消するため探す側の声を届けやすくする、補聴器とは違うコンセプトの商品として提供しました。この結果、全く聞こえなかった方でも会話が成り立つようになったということもありました。当社の施設長も認知症だから会話が成り立たなかったと思い込んでいたが全く違った。身体の機能上の問題でコミュニケーションが成り立たなかったのだ、ということも学ぶことができました。
 良い物だが世に広がっていない製品はたくさんあります。そうであれば、我々の介護事業の中で使ってみて、その効果を、エビデンスをもって示していこうというサポートも含めて出資をしたケースがあります。
(株)ERISA
石 田
  私は創業メンバーの一人ですが、MRIはもちろん医療の専門家でもありませんでした。むしろ何の専門家でもなかったから、一つの雑談も拾って膨らませて事業構想を考えることができたと思います。それから素晴らしい皆さんにサポートいただけるようになったことが大きかったです。無理やり押しかけたこともありましたが、それでも付き合ってくれた。最初の着想は小さかったかもしれませんが、いろんな方と話をすることで事業の形が作られてきた。このプロセスがオープンイノベーションではないかなと思いました。小さな会社でメンバー少ない、その中だけで抱え込んで事業化しようとしてもなかなか新しいステージへはいけない。いろんな方と相談することで新たな視点を得ることの大切さも知りました。
 いろんな人と関わって、お話をさせていただくことこそがオープンイノベーションの本質だと感じています。