ITトレンド調査「第3回ウェアラブルEXPO」 イーストバック
2017年02月09日
第3回ウェアラブルEXPO
見学者:株式会社イーストバック 山崎弘
見学展示会概要
平成29年1月18日(水)〜20日(金)の3日間にわたり、「第3回ウェアラブルEXPO」が東京ビッグサイトで開催されました。ウェアラブルEXPOは、ウェアラブル端末、IoT、AR/VR技術、ウェアラブルデバイス開発のための部品・材料等のウェアラブルに関する総合的な展示会です。
私が所属する株式会社イーストバックでは、ウェアラブルEXPOを調査することで、既存の自社サービスと連携して利用できるサービスや、現在社内で検討中のサービスの技術調査、市場調査をすることができると考え、今回の「若手エンジニアITトレンド調査委託企業の募集」に応募し、採用されました。
本報告では平成29年1月19、20日の2日間、現地調査を行った内容について報告します。
報告
展示会全体の様子
ウェアラブルEXPOの展示会場では、ウェアラブル端末を展示するゾーンと、ウェアラブルデバイスを開発するための技術を展示するゾーンの2つに大きく別れ、その他のスペースに、AR/VR、新技術、IoTを紹介する会場構成となっていました。
展示会場内には、出展スペースとは別に、出展社によるセミナー会場が設けてあり、製品・技術に関するセミナーが開催されていました。また、展示会場とは別会場で、事前申込制のカンファレンス(有料または無料のものがあり)が開かれており、ウェアラブル関連の講演を聞くことができました。
展示会場は、常に混み合っていましたが、特にウェアラブルデバイスを実際に身に付けて体験できるスペースが順番待ちで混み合っていました。
ウェアラブル業界のトレンド
展示会場では「メガネ型」、「衣服型」のデバイスや素材の展示が業界のトレンドのように感じました。
特に人気があったのはメガネ型デバイスで、メガネスーパーの「b.g.」や、エプソンの「MOVERIO」シリーズの体験スペースは、順番待ちの行列が出来るほど多くの人が興味をもっていました。
また、衣服型のデバイスや素材に関する展示物もメガネ型同様に人気があり、心拍数を計測するフィットネス関連の服や、圧電組紐、暖房機能のある服等、はじめて見る製品が多くありました。
個人的には「リスト型」のスマートウォッチやフィットネストラッカーの展示がもう少しあると予想して会場に行きましたが、意外と展示数が少ないように思いました。
注目した技術・機器・サービス
b.g.(メガネスーパー)
「視覚拡張」をメインコンセプトにした、メガネフレームの左右それぞれにディスプレイがついた両眼視タイプのスマートグラスです。説明員の方のお話では、10万円を切る価格を想定していて、無線対応等の商品バリエーションを考えておられるとのことでした。また、BtoB向けにアプリケーションとセットで拡販していきたいとのことでした。
展示会場には5種類の体験デモが実施されていて、そのうちの視力4.0を実現するデモを体験しました。デモ内容は、遠くにある人形を、望遠機能のあるカメラで撮影した映像を「b.g.」に表示することで、肉眼では見えない、人形が持っている名刺の文字を読めるようにするというものでした。「b.g.」を装着してみると、2つのディスプレイを両目で同時に見ても違和感無く1つの画面として見えました。また、展示会場が明るい状態で、ディスプレイに光が入って画面が見えづらくなるかと懸念していましたが、とても明るく見やすい画面でした。私は普段メガネをかけているのですが、「b.g.」は自分のメガネを外して着用する専用フレームのスマートグラスで(レンズに度を入れることは可能)、自分のメガネを使用できないことは、少し残念に感じました。
その他のデモでは、Pepperに内蔵されたカメラ映像を「b.g.」に表示させてPepperの視点でPepperを遠隔コントロールするデモ等が用意されており、アプリケーション次第で様々な使い方ができそうな製品だと思いました。
MOVERIO BT-350(エプソン)
ディスプレイ部分に有機ELを搭載したメガネ型のスマートグラスです。
会場では、壁面で再生されている映像にARで字幕をつけるというデモを体験しました。
「BT-350」を装着させてもらうと、耳あて部分が開閉できるようになっていて、自分のメガネをかけたままでも装着できるようになっていました。AR字幕の見え方は、会場が明るすぎたせいか、そのままでは明るすぎて見えづらく、シェードと呼ばれる色付きの半透明な板をディスプレイ部につけてもらうことで見えやすくなりました。シェードをつけてもらった後は、再生されている映像とARの字幕が違和感無く重なり合っていました。
MOVERIOを使ったアプリケーション開発に興味があったため、アプリケーションの開発方法を説明員の方に聞いてみた所、コントローラ部分がAndroid端末になっているので、通常のスマートフォン向けの開発と同様とのことでしたが、スマートフォン用の縦長の画面ではなく横長の画面で作成する必要があるとのことでした。
Stretchable Strain Sensor(ヤマハ)
伸び縮みを検出できる薄型・柔軟な繊維状のセンサーで、衣服型のウェアラブルデバイスに応用が期待されます。会場では、センサーをグローブに応用したデモが行われていました。グローブをつけた横笛を吹く女性の後ろにモニタが設置してあり、笛を吹く女性の指の動きにあわせて、モニタ映像にエフェクトがかかるデモでした。指ごとに異なるエフェクトがかかるようになっていて、笛を吹く女性の滑らかな指の動きに柔軟に反応していました。
説明員の方に、ユースケースを聞いてみた所、VR機器の操作デバイスでの活用が期待されるとのことでした。
Ears Open(BoCo)
耳たぶに挟んで使用する、耳の穴を塞がない骨伝導を利用したイヤホンです。
説明員の方に、一般的な耳を塞ぐタイプのイヤホンとの違いを聞いてみた所、鼓膜を使わないので鼓膜の健康に良いという点と、運転中の会話やスポーツ中の音楽鑑賞等、全く耳を塞いだ状態だと危険を伴う作業でも安全という点でした。話を聞いている間、骨伝導イヤホンをつけたままでしたが、イヤホンの音楽を聞きながらでも、説明員の方の声を十分に聞き取ることができました。
価格は有線のもので1万円弱、無線(Bluetooth)のもので2万円弱から2万5千円とのことでした。
神戸大学の塚本教授のお話について
展示会場で、今回のウェアラブルEXPOのカンファレンスを監修された神戸大学の塚本昌彦教授にお話をお聞きすることができました。カンファレンスは、ウェアラブルデバイスを「現場で活用する」というところにウェイトをおいたラインナップにされたとのことでした。
塚本教授に、これまで使われて良かったウェアラブルデバイスを聞いてみた所、普通に時計として使う分には精度が高くて良いという理由で、Apple Watchを上げておられました。ただ、時計機能以外の、これといった使い道は今のところ無いとのことでした。
ウェアラブルを使ったサービスについて、アイデア次第で出来ることがもっとあるので、島根から県民課題を解決するようなサービスが立ち上がってきて欲しいとのことでした。
カンファレンスについて
カンファレンスではトーマツベンチャーサポートの木村氏とFitbit, Inc.の熊谷氏の講演を聞きました。
特に興味深かったのは木村氏のお話で、シリコンバレーのウェアラブルスタートアップの最新動向を、具体的な会社名や製品名を交えながらお話いただけました。
お話中に出てきた製品は、展示会場に無いものも多く、特にMyo(Thalmic Labsが発売している腕の筋肉の電気信号を検知して腕、手首、指の動きのジェスチャーをコントロールするアームバンド)というデバイスを実際に試してみたいと思いました。
所感
展示会調査について
今回の調査では2日間の日程で展示会を見て回りました。出発前は2日間あれば時間が余ると考えていましたが、各出展社に話を聞いたり、メモを取りながら回ると、意外と時間かかったため2日間の日程で丁度よかったように思います。時間に余裕があれば、同時開催されていた他の展示会もゆっくり見たかったのですが、回る余裕はありませんでした。また、展示会場では、デバイスの体験待ち時間が1時間以上かかるものもありました。幸い2日間の日程でしたので1日目に待ち時間がかかりそうな展示は飛ばしておいて、2日目の会場直後に並ぶ工夫をすることで短い待ち時間で体験することができました。
時間内でまわるために、じっくり見学したい展示や、待ち時間がかかる展示を1日目に見極める事ができて良かったと思います。
総括
今回、首都圏で開かれている展示会を調査することで、ウェアラブル関連の製品に実際に触れて体験することができました。今の時代、地方にいてもインターネットを通じて情報を手に入れることができますし、最新のデバイスも入手することができますが、現在のトレンドを肌で感じるという点で現地に出向いて展示会を調査することはとても有意義でした。
ウェアラブル業界のトレンドや様々な製品を見ることができましたので、調査結果を今後の自社サービスに生かしていきたいと考えています。
ITOC記入情報
- 今回の報告書は、「平成28年度若手エンジニアITトレンド調査委託企業の募集」として島根県内IT企業に依頼しました。
- 株式会社イーストバック(会社ホームページへのリンク)
- 第3回ウェアラブルEXPO(イベント主催者結果報告ページへのリンク)