「ITOC業務のためのITツール類とこれから」
2017年03月31日
しまねソフト研究開発センターの準備をはじめてから早2年が経ちました。
このコラムは、ITに関することであればスタッフが自由に書ける場所なので、立ち上げから現在に至るまでにITOCで活用したITツールや、工夫したことについて書こうと思います。
ITOCでは、取り組んだ研究成果を公開することを理念に置いているので、研究とは言えませんが、取り組んだことをこういった場で報告すると、少し位何かの役に立つという方がいるのではないかと思っています。
立ち上げ
ふりかえってみると、2015年3月から開設準備を開始しました。その当時は「何をするのか」「どんな人が関わるのか」「何を求められているのか」等、わからないことだらけの中で何となく「何人くらいになりそう」「こんなことするかも」という予想をしながら、備品などの準備をしたことが思い出されます。
最初に、事務スタッフ用の机やイス、パソコン等の事務用品準備、通信回線準備を行いました。常勤3人でスタートするということだけは決まっていたので、今思い起こせばこの辺を決めるのは比較的簡単な方でした。その後の研究員さんに来てもらい「仕事をしてもらうための場づくりをする」というミッションが新しく面白い経験でした。主な内容は「研究開発事業を行うために必要な情報共有ツール類を用意すること」「研究開発室を作ること」でした。
研究開発事業を行うために必要な情報共有ツール類を用意すること
その当時は、IT関係の研究開発機関だから最新のITツールが必要になるだろうと思い込んで、どういったツール類が使われているのかを調べたり、無料のものは試したりしました。そんな中で、今事務局で使っているのはグループウェアのG Suite(Google Apps For Work)、プロジェクト管理ツールサービスのMy Redmine、情報交換としてSlack、テレビ会議はSkypeとAppear.inです。
ITOCの研究員さん達は常勤ではないため、スケジュール共有やメールアカウント、ドライブ等をクラウドで使えるようにするためにグループウェアは必須でした。また、ITOCではプロジェクトをチケットベースで進める形を取ったので、Rubyで作られたプロジェクト管理ソフトウェアのRedmineが使えるSaaSサービス「My Redmine」を使っています。初めて使ったので最初は何でもかんでも書いていました。1年目はチケット毎の期間を見ながらガントチャートで進捗管理を行っていたが、2年目になって人も事業も増えて来たことからロードマップ機能を使って関連グループ毎に管理する方法に変えました。普通の使い方とは少し違うと思いますが、意外にこんな使い方も便利だったと思っています。開設時期から興味を持っていたビジネスチャットサービスであるSlackも2016年1月から使い始めてみました。最初は英語の説明しか出てこないから不安でしたが、Webを頼りに見よう見まねで設定していくと、思っていた以上に使い勝手が良くて、簡単なやり取りを行うには非常に便利です。今は、他のスタッフがインテグレーションをいくつか導入してくれて、勝手に情報が入ってくるのでコミュニケーションだけでなく情報収集にも役立っています。
色々な方とテレビ会議をする機会が多いので、最初はSkypeを使っていましたが、最近はAppear.inを使うことが多くなってきました。なぜなら、Maxでも3-4拠点程度で会議することが多く、ブラウザがあれば個人のアカウントなどを持たなくても良いので非常に使い勝手が良いサービスです。
以上のように、今使っているツール類以外もいくつか便利なものがありましたが、ITOCの業務スタイルに一番マッチするのが現在使っているサービス群ではないかと思っています。仕事のやり方や内容、メンバーが変わって来れば、やがて変わってくるのかもしれません。
色々なツールを試しておくことは有益だったこともありました。それは、テレビ会議をはじめようとした時に、予定していたサービスだとうまくいかず、2つ目もダメで、結局Facebookのビデオ通話機能を使ったことがありました。自分で確かめておくのは重要だと感じた瞬間でした。結局テレビ会議の仕組みは、どういった相手とどの位の頻度で使うかわからなかったことと、無料のサービスでも十分に使えることがわかったので、6つ以上使ってみて今のものにたどり着いています。
研究開発室を作ること
目に見える仕事としては、研究室のレイアウトを考えて什器類を準備することでした。
先駆的な研究を行うということで、1か月ほど前にシリコンバレーへ行かせてもらって、訪問した大学やスタートアップ支援施設、IT企業で見たことが頭に残っていて、次のようなことが必要じゃないかと思っていました。
・会議室には必ず大きな液晶ディスプレイがあること
シリコンバレーでは皆さんディスプレイにパソコン画面を投影して説明してくれて、見やすかった。
プロジェクターを使うと部屋を暗くしなければならないため、テレビ会議を行おうとすると顔が暗く映ってしまいそう。
・ソファや書籍があるリラックススペースを設けたい
シリコンバレーではだいたいこういった場所が用意されていた。
研究員ファーストに考えていたので、自由な場所で開発してもらえればよいと思い、ソファも用意したいと思った。
・間仕切りにガラスが使われていること
ITOCの取り組みもオープンイノベーション等というキーワードがひっついていたので、オープン=見える というイメージから、開発室は壁で見えなくしないで、ガラス越しに広く見えるようにしたいと思った。
思っていても、まず何から考えたら良いのかさっぱりわからなかったので、最低限何が必要なのかを聞くことからはじめました。プログラミング開発をする方やIT企業の方、什器等に詳しい業者の方などに聞いていきました。すると、我々が行う研究開発で最低限必要なのは机と疲れないイスとインターネットに無線でつながることとホワイトボードでした。
必要な機器が分かったので、次は何人くらいが勤務する場所を想定するかを探りました。ここがかなり難しかったです。何をやるのかがぼんやりしか決まっていない段階だったので、「何人からスタートするのか?」「将来的に何人くらいまで入れるようにしておくのか」「個別のプロジェクトルームを用意すべきか」「研究室はセキュアにしなければならないのではないか」というようなこと全体を想定して、ITOCに関わる方々の意見を聞きながら想定していきました。結局は研究ゾーンで12名、事務局6名、簡単な勉強会などで12名くらいの人数が使えるようになることを想定して間取りを考えることになりました。
間取りを考える際も、プロジェクトが複数出来た場合、間仕切りをどうするのかが悩み所でしたが、天井に備え付けの空調や防火設備の関係で、今の間仕切りが初期で出来る理想的な姿に落ち着くことになりました。消防法が関係して来そうだとは思っていて、消防署へ行きましたが、建築基準法も関係があるということで市役所へ行って話を聞いたりもしました。個室を作った関係で「無窓階」という言葉をはじめて聞くことにもなりました。
こだわり
3-4カ月も色々とやっていると、なんとなく部屋の方向性が見えてきました。
特にこだわったのは、すべての机とイスをキャスター付きにしたことです(ミーティングルームのテーブルを除く)。これには理由があって、関わる人の人数がどうなるのかわからず、また、部屋の半分位でセキュアな開発スペースとオープンな事務側のスペースを間仕切ることにしたため、物理的に部屋の広さに限界が生じ、その範囲内で自由に使いやすく変更出来るようにしようとしたからです。また、事業の仕方が変わった時や研究プロジェクトが増えたりしても、使いやすいように自由にレイアウトが出来るようにするためでした。事務局用の机もフリーデスク仕様で、誰がどこに座っても良いかたちにして、荷物は暗証番号式の個人ロッカーに入れて帰るようにしました。機械学習勉強会を事務所で開催した際には、12名を超える方にご参加いただけたので、事務用の机が使えてキャスターが役に立ちました。
1年経つと人も増え、机も増やしたり、自分たちで配線を敷設したりする時にも役立ったと自分では思っています。
床のカーペットはエリア別に少しずつ色を変えています。開発室は少し明るめにしていたり、会議室は少し暗めで落ち着いた感じにしています。汚れが目立たないように適度に柄が入ったものにもしました。人工のものですが植栽を置いて、ちょっとした目隠しや適度な緑を入れるようにしました。
開発室の個室の間仕切りは全面ホワイトボード仕様にしています。それ以外にも合計11台の可動式ホワイトボードとシートタイプのホワイトボードシートを使っているので、いつでも打合せで使えますし、気になることを書き留めることが出来ます。
目に見えない部分では、ミーティングルームでの声が聞こえにくくするためのサウンドマスキングシステムを入れていることです。当時島根県内では初めての導入だったと聞いています。中国地方でも広島でしか導入実績が無かったとのことでした。ミーティングルームと事務局エリアではかすかに音がしていて、声にマスキングをかけています。効果がどれほどのものかは実際に体験してもらった方が良いです。
個人的にはスタンディングデスクを研究員さんに使ってもらいたかったのですが、すぐに導入できて使い勝手が良さそうな商品が見つからずに断念しました。それと可動間仕切りも検討したのですが、単価が高かったり、天井への造作がかなりあるということでこちらも断念しました。
什器類を色々と見る機会が多かったので、最近のイスは様々な機能があることが分かりました。高さ昇降や背もたれの角度調整はよくありますが、背もたれの角度を固定出来たり、背当てのサポートの張りの強さや座面の広さが調整出来て、かなり構造が複雑になっていることがわかりました。
ITOC内は、360度カメラで撮影してもらいサイトで公開しています。もしご興味がある方は以下のアドレスからご覧ください。タブレット等でご覧になると若干の没入感もありますよ。少しずつレイアウトを変えているので、今事務所においでになられると雰囲気が違っていますが。
http://www.s-itoc.jp/about_us/facility/
今後の取組み
これらは、主にITOCのバックオフィス的な部分でした。それ以外にも、Webカメラを設置して松江駅方面を5秒毎に撮影した静止画をITOCホームページ(トップページの左下)で公開したり、360度全天球カメラTHETAで事業風景を撮影したり、サーモカメラを導入したりして、好きに遊ばせてもらった感じがしています。
最近の取り組みでは、ITOCminiLabというプロジェクトをはじめていて、事業者の皆さんに色々な最先端ツールを使ってもらおうと取組み始めました。ヘッドマウントディスプレイやドローンの利活用が世の中的に進んでいるので、県内でもまずは使って体験してもらうことを考えていくつかの機器を導入し始めています。先日はHoloLensを知事に付けていただいてうれしかったです。
これらの機器は4月以降にどんどん触ってもらう場を増やしていく予定なので、適宜ホームページの方をご覧いただければ幸いです。
http://www.s-itoc.jp/lab/
(主任 布野 卓也)