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名称: 山口情報芸術センター
場所: 山口県山口市中園町7-7
URL: http://www.ycam.jp/

※本ページに掲載されているのは、2016年8月時点の情報となります。

施設の設置目的

山口市の文化・情報を中心としたまちづくりの中心的な役割を担うことを目的として設立された

施設の設備、備品、その他通信や飲食提供などの環境

一般市民へ開放されている施設は以下。

  • 山口市立中央図書館(管轄は教育委員会だが、施設内で繋がっており、山口情報芸術センターとの間で人の循環が起きている)
  • スタジオ
  • 中庭
  • ホワイエ&ギャラリー
  • インフォメーションスペース
  • コミュニケーションスペース
  • レストラン(休業中)
  • 多目的室
  • ワークスペース

ワークショップのイベント時にのみ利用される

  • バイオラボ

現在建設中で、バイオリテラシーの底上げを狙ったワークショップなどを計画している。ワークショップ時にのみ利用される予定。

内部に設置された研究開発チーム「YCAMインターラボ」が制作等に利用する設備は以下。

  • 3Dプリンター(光硬化式、熱融解式の2種類)、CNCフライス、大型木材加工機、チップマウンター、レーザーカッター、はんだごて等のアナログ工具

施設の利用者

小学生や、メディアアートに関心のある若者が多い。(併設されている山口市立中央図書館との間で人の循環が起きている)

当該施設利用者が、現地で行えること。利用者の過去の実績など

子供達が遊び方やルールを自分たちの手でつくっていく公園施設。
利用者のアイディアを吸い上げ、実際に山口情報芸術センターが実装していく。子供達に対して存分に失敗が許容される空間として機能した。自分たちで何かを作り上げていけるという自信が生まれ、やがて自然とメンテナンスや掃除などが始まり自治が生まれていく。
もともと期間限定の企画であったが、残して欲しい子供達が自分たちでどうすれば残せるのかを考え、最終的に設置期間の延長を嘆願する署名を集めて山口市長へそれが渡り、期間延長が決定した。

  • 映画の鑑賞
  • ワークショップなどのイベントへの参加

全体として、利用者自身に、公共空間の使い方を考察して工夫して使ってもらうことを推奨している(例えば、子供達が地べたに寝そべってゲームをしている場合、それを注意しないで他の利用者の迷惑にならない範囲でいかに自由につかってもらうかを重視している)

施設が所在する周辺地域、日本国内、及び海外の他ファブ施設との連携実績

他ファブ施設との連携としては実績が無いが、地域内の連携は今後進めていくことを視野に入れているという段階。
特に、山口情報芸術センターの研究成果を一般市民へ還元する役割をファブラボ山口に期待している。
成果のサービス化、プロダクト化、より理解しやすい形でのワークショップを通しての市民と山口情報芸術センターの橋渡し役としてのファブラボ山口を期待している。

施設を維持する収益構造

利用料は全て無料
予算の93%は山口市(このうち、市から文化庁へ助成金を申請して財源にまわしているものもある)
それ以外は文化庁からの助成金や民間助成

施設の管理者、特にマネージャーの役割、当該者の経歴、得意分野

人数の変動が常にあるが、研究要員20名程度、事務要員20名程度の規模。
(雇用形態は、学芸員という形で、専門員、副専門員、常勤職員、臨時職員で5年契約であり、必要に応じて契約更新される)
山口市からの派遣員が3名。

研究要員の例.

  • サーバー/ネットワークエンジニア
    東京のIT企業にシステム・エンジニア(SE)として勤務。自治体の基幹システムの開発などメインフレーム系の案件や半導体製造装置のソフトウェアの開発などに従事した後、山口情報芸術センターのスタッフに着任。
  • 音響エンジニア
    名古屋学芸大学メディア造形学部映像メディア学科の助手として、メディア・アートに関する教育活動に従事。2012年、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修士課程に入学。また、2010年ごろからアーティストとして、DJ、VJ、インタラクティブ作品の制作、舞台映像の演出など、幅広く活動し、作品の内容によってはシステム開発も行う。2015年4月、山口情報芸術センターのスタッフに着任。
  • 映像エンジニア/デバイスエンジニア
    慶應義塾大学環境情報学部環境情報学科出身で、卒業後は、研究員として母校に残り、学会発表など研究活動を継続。2013年4月、山口情報芸術センターのスタッフに着任。
  • エデュケーター
    京都造形芸術大学芸術学部環境デザイン学科建築コース卒業後、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)に入学。建築の表面に映像やインタラクションを取り込んだ「メディア・ファサード」について研究する傍ら、建築設計事務所に勤務。2009年5月に山口情報芸術センターのスタッフに着任し、オリジナル・ワークショップの開発やファシリテーションを行う。また、外部から先端的なテーマに取り組むアーティスト/技術者を招聘し、共同で研究開発をおこなうプロジェクトが不定期に実施される。
    例. http://www.ycam.jp/projects/guest-research-project-vol3/

総務の役割としては、危機管理(ワークショップ時には万が一の事態を考えて保険をかけたり、救急車の誘導ルートを用意したり、連絡体制を整備するなど)を行うことだが、常に前例のない研究活動のため決められたマニュアルが無く、都度調整する。

運営者、又は管理者の感じる施設の課題

  • 活動に対して理解いただけない人への説明など、山口市民に対して説明責任を果たすことの難しさは常にある。文化づくりを行う活動だが、文化の成果は可視化しにくく、費用対効果を問われた時に客観的な数値で説明しづらい。
  • これまでは海外に向けての発信が多かったが、今後は地元の人が身近に感じてもらえるような活動を増やして、地域に還元する活動を意識していく
  • 人が人に説明しづらい施設であるということ。美術館でもなく、博物館でもない、言語化が難しい施設。(オリジナリティという意味では良い)

レポート

クリエイターのような多様な人材が集まってきて、彼らが存分に能力を発揮できるような場を維持するために行政サイドが意識していることは、 

  • やりたいことをやらせる
  • 信頼関係(山口市が発展していく青写真をキュレーター側が描いてそれを信頼関係のもと実行する)
  • 失敗もあり得ることが前提

というお話が印象的だった。
現場では、実験の毎日、ほとんどが失敗、毎日修正ということだったが、「失敗ができる場、許容されるしくみ」を行政サイドと現場サイド一体となって実現している印象を強く受けた。
それこそが、上記で示したような実績・成果を継続して生み出していっている大きな理由であると感じた。
(行政サイドとしては正直周囲からの風当たりが強い部分もあるが、全力で守って、任せているというお話があった)

また、研究要員の人材として重要視している能力として、高い専門性だけではなく、多分野な人間達とスムーズにコラボレーションできる能力であるという部分も共感した。
昨今ではオンラインでの情報収集や学習でそこまでは到達できる。そこまで到達できれば、より高度な専門知識や技術を持った人と共通言語でコミュニケーションができる。 必要な際に専門家と密なコラボレーションをできることこそが重要であり、自分が専門家である必要は無いという考え方である。
そのため、研究要員には一応の肩書があるが、携わる分野は一つでなく、全員が複数の分野をまたいで思考することが日常となっていた。

また、地域の中での役割としては、基礎研究を進める枠割であり、そしてその成果の応用やサービス化、ビジネス化は周囲の施設の役割として地域全体で連携していくビジョンも参考になった。

運営者

公益財団法人山口市文化振興財団

(2016年8月現在)